~伐られた樹は伐られてなお、生きた年数分だけ生き続ける~
鑑真和上一行等が、日本渡航途中に立ち寄られた屋久島には、当時から樹齢数千年の屋久杉が多く存在しました。当時は全て御神木として、伐採されることは無かったと伝わっています。
屋久杉は標高800メートル前後に多く、養分の少ない岩盤の上に生えています。しかし一年中降る雨のお陰で、数千年もの長い間生き続けられると言われています。この自然の宝庫と呼ばれる屋久島は、1993年に「日本初の世界自然遺産」に登録され、屋久杉生木については、一切の伐採を禁止しました。
我々は、登録後唯一許されたエリアから伐り出された「土埋木」と呼ばれる伐り株や、江戸時代に山に遺された倒木などの材の極一部を、千年先に遺せる帯づくりに使わせていただきました。さらにTsurubami最後の「二千年木屋久杉縄文之箔糸」は平城京遷都1300年を記念した供養本尊、「遣唐使及び長屋王供養縁起図像」の制作の任を賜ったことで、当時の長屋王・鑑真和上・遣唐使等が共に生きた時代の原木として織り込み、奈良の元興寺様に収まることになりました。
幹回りが10m 近い屋久杉。
4㎝の厚みの中に400年を超える年輪が確認され、今となっては貴重な資料です。
我々はこれ等の材を0.085mmまで薄くすることで木の風化を止め(特許)、不可能とされた原木糸を実現させました。
屋久杉二千年木最後の糸は、2017年秋に平城京遷都1300年を記念して、当時の長屋王・遣唐使・鑑真和上を供養する本尊として、元興寺(奈良)に奉納されました。
施主は若原昌子様で、本尊は二つの史実を基に、左右で見え方が変わる技法「曄變織」により仕上げました。